LGBT(LGBTQ)と相続対策

2018年8月20日生活

暑くなったり少し涼しかったりと、体調を崩しそうな坂口です。こんばんは。
前回は死亡届のことに焦点を当てた養子縁組についての記事でしたが、今回は相続が起きたとこのことです。

LGBT(LGBTQ)の相続を考える

LGBT(LGBTQ)の方はパートナーと養子縁組をするか、戸籍上の性別の変更を経て婚姻しない限り、相続人となることができません。

(死亡届と養子縁組の関係については先日記事として挙げてあるのでご参考ください)

パートナーの方へ遺産を渡したいと考えているのであれば、対策を講じなければいけないことになります。

相続人以外へ遺産を渡したいとき

仮に何の対策も講じないのであれば、遺産は相続人全員での話合いでどのように分けるのかを決めます(遺産分割協議)。
このとき、相続人以外の人に対して分けるということはできません。
(分配後に別途贈与という形で渡すことは可能です)

LGBT(LGBTQ)パートナーが法律上の血縁関係にあればいいのですが、そうでないときはどうしても遺言や死因贈与契約を結んでおくといったことを行う必要があります。

遺言と遺言執行者

遺言というのは最後の意思表示です。
つまり相続人ではない人へ財産を渡すということを明記しておけば、それが叶います。
また、遺言執行者といって遺産の分配などを行うために実際に動き回る人を指定することが可能です。

特に公証人役場で公正証書遺言を作っておけば、そこで指定された遺言執行者のみで遺言内容に沿った預貯金の解約手続きを行えるため、遺言であれば自筆証書遺言よりも公正証書遺言をすすめる専門家が多いです。
(自筆証書遺言では手続きができないというわけではないのですが、金融機関によって取り扱いが異なるケースもあります)

自筆証書遺言と公正証書遺言の違いについては以下をご参照ください。

遺言執行者を指定していなかったとき

遺言で執行者を指定していないときは、預貯金の解約なども含めて相続人が手続を行うために動き回ることになります。

LGBT(LGBTQ)パートナーとしてご家族に理解を得られているのであれば問題は生じにくいのですが、仮にご家族にはしっかり話をされていない場合、遺言執行者を指定していないともしかしたらせっかく遺言書を用意したにもかかわらず実現してもらえないという可能性もゼロではありません。

パートナーの方を遺言執行者として指定しておくと

LGBT(LGBTQ)パートナーと事後的に別れてしまったとき

公正証書遺言を用意したけれども、別れてしまったので遺言書をなかったことにしたいときはどうすればいいのでしょうか。

遺言を撤回したいときは、新たに遺言書を作成すれば前の遺言書に抵触する部分は撤回したものとみなされます。
つまり、たとえば相続人であるご家族に対して法律上の割合に応じて相続させる(法定相続さっせる)という遺言書を用意すればいいことになります。
常に新しい日付のものが優先されるということです。

公正証書遺言と自筆証書遺言の優劣

このとき公正証書遺言である必要はありません。
公正証書遺言は自筆証書遺言より強いというのは誤解です。
あくまで日付がより新しいものを基準に考えます。

ただ、別れてしまったLGBT(LGBTQ)パートナーが勝手に公正証書遺言を用いて預貯金の解約などを行うという可能性を完全に否定することはできません。
残念ながらパートナーと別れてしまったときは、公正証書遺言を間違っても渡したりせず、保管場所を変えてください。

おわりに

遺言だけではなく死因贈与契約においても執行者という概念はあります。
遺言や死因贈与など、どの方法を用いるかはそれぞれの背景は事情によって異なってくるので、気になるときはお気軽にご相談ください。

当事務所の報酬を含めた費用などについては以下をご参照ください。