道路交通法の改正(2019年)について

生活

報告が遅れてしまいましたが、新しい家族(保護猫)が増えた司法書士の坂口です。
先住ネコとの相性もいいみたいで安心しています。

12月1日から施行されている道交法について

メディアなどでも取り上げられていますが、2019年12月1日から改正された道路交通法が施行されています。
いわゆる「一発免停」などまとめられた情報は溢れているのですが、具体的にどのように定められているのでしょうか。根拠として法律などを持ち出して解説しているので少々読みにくいかとは思いますが、どこに根拠があるのかを知るというのは大切なことです。

今回は、その根拠を紐解いていきます。

運転中のスマートフォン・携帯電話等使用

ながら運転による事故の増加を受けて、罰則などが強化されることになりました。

1.罰則等(令和元年12月1日施行)
(1) 携帯電話使用等(交通の危険)
罰  則 1年以下の懲役又は30万円以下の罰金
反 則 金 適用なし
基礎点数 6点
(2) 携帯電話使用等(保持)
罰  則 6月以下の懲役又は10万円以下の罰金
反 則 金 大型車2万5千円、普通車1万8千円、二輪車1万5千円、原付車1万2千円
基礎点数 3点
(警視庁webページより引用)

(1)の基礎点数6点というのが、ニュースなどで賑わっている一発免停の根拠です。

では、「交通の危機」や「保持」とは具体的にどのようなことなのでしょうか。

改正された道路交通法の条文(抜粋)

 (運転者の遵守事項)
第71条 車両等の運転者は、次に掲げる事項を守らなければならない。
第5号の5 自動車又は原動機付自転車(以下この号において「自動車等」という。)を運転する場合においては、当該自動車等が停止しているときを除き、携帯電話用装置、自動車電話用装置その他の無線通話装置(その全部又は一部を手で保持しなければ送信及び受信のいずれをも行うことができないものに限る。第百十八条第一項第三号の二において「無線通話装置」という。)を通話(傷病者の救護又は公共の安全の維持のため当該自動車等の走行中に緊急やむを得ずに行うものを除く。同号において同じ。)のために使用し、又は当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置(道路運送車両法第四十一条第十六号若しくは第十七号又は第四十四条第十一号に規定する装置であるものを除く。第百十八条第一項第三号の二において同じ。)に表示された画像を注視しないこと。

条文は読み慣れていないと、難しそうに感じます。

この第71条第5号の5ですが、主語は「自動車又は原動機付自転車」となっています。
つまり、自転車などは今回の改正には関係がないということです。
あくまで自動車や原付を対象としています。

スマホやカーナビがダメという根拠

ながら運転としてスマホやカーナビがアウトというのはどこに書かれているのでしょうか。
これもさきほどの第71条第5号の5に定められています。

通話

携帯電話用装置、自動車電話用装置その他の無線通話装置(その全部又は一部を手で保持しなければ送信及び受信のいずれをも行うことができないものに限る。第百十八条第一項第三号の二において「無線通話装置」という。)を通話(略)のために使用

携帯電話、自動車電話、その他の無線通話装置とあるので、スマホに限らずガラケーもアウトです。トランシーバーなどの無線も通話できるものであれば同じようにひっかかります。

ただし、「その全部又は一部を手で保持しなければ送信及び受信のいずれをも行うことができないものに限る」とあるので、ハンズフリー機能を利用した場合については除かれます。
※安全に運転するための音や声が聞こえないような状態にある使い方を行った場合、都道府県の条例でアウトとなることもありえます。

注視

当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置(道路運送車両法第四十一条第十六号若しくは第十七号又は第四十四条第十一号に規定する装置であるものを除く。第百十八条第一項第三号の二において同じ。)に表示された画像を注視しないこと。

「当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置」というのがカーナビなどを指します。通話していなかったとしてもスマホなども画像表示をさせる機能が当然あるので、該当します。
こちらは「手で保持しなければ」とないため、実際に手に取っていなかったとしても画像を注視していたらアウトです。
※カーナビなどは車に備え付けられていることが多く(スマホホルダーなどを用いて取り付けていることもあるかと思います)、手に持ったまま運転することは通常考えられません。

ただし、速度計や方向指示器などは安全に運転するためのものなの、括弧内で除かれています。

携帯電話使用等(交通の危険)

スマホなどを使ったことによって交通の危険を生じさせることを指します。

15 「携帯電話使用等(交通の危険)」とは、法第七十一条第五号の五の規定に違反する行為(同号の規定に違反し、よつて道路における交通の危険を生じさせた場合に限る。)をいう。(道路交通施行令 備考)

その罰則概要は先に記載しましたが、その根拠は次の条文にあります。

道路交通施行令
第117条の4 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
第1号の2 第七十一条(運転者の遵守事項)第五号の五の規定に違反し、よつて道路における交通の危険を生じさせた者

別表第二(第二十六条の七、第三十三条の二、第三十三条の二の三、第三十六条、第三十七条の三、第三十七条の八関係)
一 一般違反行為に付する基礎点数
速度超過(三十(高速四十)以上五十未満)、積載物重量制限超過(大型等十割以上)、携帯電話使用等(交通の危険)、無車検運行又は無保険運行 6点

結局「交通の危険」ってどのように定義されているのかわかりにくいですが、交通事故を起こすというのがその1つの例となります。
ただし、事故を起こさなければ「交通の危険」に該当せず、必ず次の「保持」になると言い切れるわけではありません。

携帯電話使用等(保持)

保持の場合は交通の危険を生じさせたわけではないため先ほどよりは多少軽いですが、それでも従来に比べると重たい反則金などに変更されています。

道路交通施行令
別表第二(第二十六条の七、第三十三条の二、第三十三条の二の三、第三十六条、第三十七条の三、第三十七条の八関係)
一 一般違反行為に付する基礎点数速度超過(二十五以上三十(高速四十)未満)、放置駐車違反(駐停車禁止場所等)、積載物重量制限超過(大型等五割以上十割未満)、積載物重量制限超過(普通等十割以上)、携帯電話使用等(保持)又は保管場所法違反(道路使用) 3点

別表第六(第四十五条関係)
六 速度超過(二十五以上三十未満)又は携帯電話使用等(保持)
大型車 二万五千円
普通車 一万八千円
二輪車 一万五千円
原付車 一万二千円

例外規定

どのような場合においても禁止されているかというと例外はあります。

停止しているとき

道交法第71条第5号の5において「当該自動車等が停止しているときを除き」とあるので、赤信号などで停止しているときは対象とはなりません。
もちろん止まっているので使っていたとしても、そのまま発進したらアウトです。
よほどの事情がない限り、停止しているからといってスマホなどを触らないほうがいいと思います。

救護、交通安全の維持

「傷病者の救護又は公共の安全の維持のため当該自動車等の走行中に緊急やむを得ずに行うものを除く」と括弧内に定められています。
つまり、救護や安全維持のためにやむを得ず緊急で行う場合も、この取り締まりの対象にはなりません。(仕事などの緊急事態は対象とはなっていません)

おわりに

ここでは、根拠となる法律などを紐解いているので仰々しくなってしまいましたが、ニュースなどで注意喚起されている内容を把握していれば、概ね間違いはありません。

安全運転に心がけ、違反などをしないように気を付けましょう。