民法100条~本人のためにすることを示さない意思表示
2019.11.25追記)
2020年4月1日より民法が改正されます。
以下の記事は改正に影響されないものであることを、あらかじめご了承ください。
また、電子書籍につきましては民法改正に対応させたものを販売しています。
なお、すでにご購入しただいている方につきましても、ファイルを上書きしてありますので、改正民法における解説に自動的に差し変わります。
宅建士の試験において民法の代理は頻出論点です。
代理の条文や要件・効果を正確に把握することが合否に影響を及ぼすということになるわけですが、ただただ丸暗記をするのは負担が増えてしまいます。
対話形式でイメージを掴んでから、しっかり憶えましょう。
民法第一〇〇条(本人のためにすることを示さない意思表示)
民法100条の条文は次のとおりです。
(本人のためにすることを示さない意思表示)
第100条 代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみなす。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、前条第一項の規定を準用する。
民法代理(100条)の対話
Q「文章が回りくどい」
P「唐突だな」
Q「読み難いから憶えにくいんだよね」
P「これも当たり前のことしか言ってないけどな」
Q「どゆこと?」
P「まず100条の本文を見てみよう」
Q「本文とは」
P「そこから?」
Q「そこから」
P「但書きの前までのことだよ」
Q「端折ったな」
P「バレてる。だって条文構造の解説をするとなると、それなりの量を割くことになるからここに納めるのが大変だし」
Q「どっかでやるように」
P「気が向いたら」
Q「」
民法100条本文
代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみなす。
P「本文を分解して考える。『本人のためにすることを示さないでした』とは」
Q「民法99条の顕名と表現が似てる」
P「そうそう、顕名は『本人のためにすることを示してした』だから、顕名しなかったってことだな」
Q「それ、代理の要件から外れるやん」
P「代理の要件に外れたときはどうなるかっていうことを定めた条文と考えよう」
Q「なるほどな」
P「どうなるかというと『自己のためにしたものとみなす』だ」
Q「自分のために意思表示したってことか」
P「そう。『みなす』ってあるから、覆すことはできない」
Q「そんなに『みなす』って大事なん?」
P「『みなす(見做す)』と『推定する』は雲泥の差」
Q「そこまで?」
P「そこまで。裁判になったときに」
Q「裁判」
P「見做すは反対の事実を証明しても覆せないからな」
Q「推定するは?」
P「覆そうと思えばできるということ」
Q「違うな」
P「全然違う」
Q「つまり顕名がなかったら問答無用で自分のためにしたってことになる」
P「その通り」
Q「例外はないの?」
P「それが『但書き』以降にある」
民法100条但書き
ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、前条第一項の規定を準用する。
Q「『相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたとき』のこと?」
P「そう」
Q「非常に読みづらい」
P「わかる」
Q「つまりどういうことよ」
P「前回のたとえ話でいえば、相手方とはお店の人。代理人はRくん」
Q「『本人のためにすること』は顕名のことか」
P「そうそう。それをお店の人が知っていたとか知ることができたときというのが例外になる」
Q「『知っていた』っていうのは分かるけど、『知ることができたとき』ってなんぞ。ふわっとしてる」
P「お店の人に過失があったってこと」
Q「普通なら知ってるでしょっていうようなときのこと?」
P「うむ。そして『知っている』ことを法律用語で『悪意』という」
Q「悪意」
P「悪意」
Q「誤解しそう」
P「わかる」
P「解説書などには『悪意・有過失』ってあるけれど、簡単に言えば『知っているか、うっかりで知らなかっただけ普通なら知っているでしょ』ってこと」
Q「これならわかる」
P「せやろ?」
Q「こういったときは『前条第一項の規定を準用する』とある」
P「前条とは」
Q「99条」
(代理行為の要件及び効果)
第九九条 代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。
2 前項の規定は、第三者が代理人に対してした意思表示について準用する。
P「準用とか適用とかの解説は端折る」
Q「あ、はい」
P「つまり、お店の人が悪意・有過失なら99条に戻るから代理の効果が発生するってことだな」
Q「でも、なんで『第一項の』ってなってるんだ?」
P「100条の主語は?」
Q「代理人が」
P「99条2項の主語は?」
Q「前項の規定は」
P「すまん俺が悪かった。主体は?」
Q「第三者が」
P「そういうこと」
Q「ああ、代理人に関することだから第2項は関係ないってことか」
P「正解」
Q「えちg」
P「おっと、そこまでだ」
まとめ
上のような対話でイメージできたことを踏まえて、次の条文を正確に把握しましょう。
(本人のためにすることを示さない意思表示)
第100条 代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみなす。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、前条第一項の規定を準用する。
ディスカッション
コメント一覧
はじめまして。
なんで100条では但書きがあるのにみなすなんでしょう?
立法者は推定規定にすることで、反証を代理人にさせればいいと思えるですが?
ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、前条第一項の規定を準用する。←この条文の意味するところ反証は結局代理人がするのであるから。つまり結局反証できるのだからみなすとせずに推定するとしても同じだと考えます。
訴訟法の知識が乏しいのもあるのでその点に解決策があったら教えてもらえるとありがたいです。
はじめまして。
条文上の「みなす」は、たとえばAという前提があったときに、Bとみなされるため覆せないということを意味します。
100条ただし書についてですが、
代理人にとって、ただし書のような状況においても前提(代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示)が成立するのであれば「自己のためにしたもの」と見做されてしまうことがあまりにも酷です。
また、そもそも前提が成立するかどうかが争点となりうるのですが、前提が成立していたとしても例外としてただし書に該当するときは99条1項を準用することにしたと考えれば理解しやすいのではないでしょうか。