「相続」が「争族」になってしまう
「争族」というのは造語であって、遺産を相続人たちで分けるときに争いが起きてしまう状態を指します。
この「争族」は相続財産(遺産)がたくさんある時だけしか起こらないとは言えません。たとえ少額財産だったとしても、争いが起こってしまうことは実際にあります。
預貯金などは分けやすいですが、不動産を物理的に分けるのは費用も手間もかかってしまうことから、預貯金が少なくて不動産がたくさんあるときなども相続で揉めることが起こりえます。
相続のときに争いになって欲しくないときに、遺言書を作成しておく意義はあります。
また、遺言執行者を指定しておくことによって、実際に亡くなった時の手続きなどがスムーズに行えるようになり、ご家族の負担も軽くなります。
エンディングノートという言葉を耳にされたことがあるかもしれません。
ご相談の際には、遺言書とエンディングノートとの違いについてのご説明もさせていただきます。
事務所は春日井市(勝川)にありますが、近郊でしたらお伺いすることも可能です。
遺言の厳格な要件
遺言とは、人の生前における最後の意思表示であり、これを尊重することによって遺言者の意思を実現させるための制度です。
遺言によって生前に自身の財産を自由に処分することを法律上認めている一方、厳格な要件を定められています。この要件によらない遺言は無効となります。
公正証書遺言といって公証役場で作成するときは、遺言の形式をしっかりと守ったものを作るので問題はありません。
ところが、自筆証書遺言(公証役場ではなくご自身で遺言書で書かれたもの)については書籍などの遺言書セットなどを使うことによって基本的に形式は守られるのですが、書き方によってはご自身の希望に沿ったものにならないケースがあるから、注意が必要です。
※自筆証書遺言と公正証書遺言の違いは下の記事に記載しています。
遺言書は亡くなった方の最後の意思
遺言書というものは、亡くなられた方の最後の意思表示という性質を持っています。
ご自身が亡くなられた後、遺言書がないと遺産分割協議を行うことが一般的ですが、その際相続人間で揉めることがあります。
揉める・揉めないは遺産の多寡(多い少ない)に関わらないようです。
相続人同士で揉める姿は哀しいものです。そうならない為にも、遺言書を残しておくことをおすすめします。
また、遺言はあくまでご自身がどのようにしたいかという一方的な意思表示です。
たとえば春日井市に住んでいるけれども子供が名古屋と東京にいるときに、どのような遺言を作成したのか会って了解を得る必要はありません。
あくまで一方的な意思表示なので電話で報告する必要はないのですが、遺言書があることや、仮に一方に有利な内容となっているときは遺言書を原因として揉める可能性があります(遺留分の項目を参照ください)。
相続の手続きをするとき、いきなり遺言書を持ち出して揉めないようにやんわりとご家族に伝えておくことをおすすめするケースもあります。
遺言書の種類
遺言書には大きく分けると「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」があります。
※厳密にはもっと細かい区分けが法律上なされています。
自筆証書遺言
遺言する方が自筆で遺言の内容全文および作成した日付を書き、署名と捺印をして作成するものを指します。
形式が法律で定められているため、どれか一つでも足りないと無効になります。
すべて自筆で作成する必要があり、相続の手続きにおいてはまず家庭裁判所にて検認手続きを経る必要があります。
金融機関によっては検認を経た自筆証書遺言でも解約手続きに応じてもらえないケースもあるため、注意が必要です。
以下にメリット・デメリットを纏めました。
※平成31年1月13日からこのルールが変更されました。
財産目録といって、具体的な不動産や預貯金などについては直筆ではなくパソコンなどで作成したものに、署名と捺印を全ページにすることでも遺言書として有効ということになりました。
今までのように全部を直筆で書くという負担が軽くなったので、遺言書を自分で作りやすくなっています。
メリット
・自分で書くので費用が安く済む
・遺言を書いたことを秘密にしておける
デメリット
・誤字訂正を含め形式が厳格であるため、遺言書が無効になることがある
・遺言書が発見されないことがある
・誰かに偽造されたり隠されたりされる可能性がある
・家庭裁判所に遺言書の検認申立を行う必要がある
・金融機関によっては検認を経た自筆証書遺言でも解約手続きに応じてもらえないケースもあるため
公正証書遺言
二人の証人とともに公証人役場で遺言の内容を口頭で公証人に伝え、文書化してもらうもので、遺言の原本は公証役場で保管してもらえます。
春日井市に公証人役場はありますが、名古屋市内などどこの公証人役場でも手続きはできます。勝川に住んでいるからといって春日井公証人役場でなければならないという決まりはありません。
自筆証書遺言とは異なり、検認手続きを経る必要なく不動産の名義変更や金融機関の解約手続きなどを行うことができます。
また、公証人役場で保管されるため紛失のリスクもありません。
メリット
・偽造の心配や紛失の心配がほとんど無い
・全国どこの公証役場からでも、遺言の有無を調べられる
・公証人が作成する為、不備により無効ということがない
・死後に、遺言書の検認申立を行う必要が無いため、相続手続がスムーズに進行しやすい
デメリット
・証人を2人頼まなくてはいけない
・証人に遺言の内容が知られてしまい、内容が漏れる恐れがある
・必要な書類を持参していかなくてはならない
・公証人に手数料を払う必要がある
遺留分の問題
相続人には遺留分という権利があります。
これは法律上守られている相続人の権利であって、たとえ遺言で一部の相続人に財産を渡さない旨としていても、遺留分の範囲内において相続人から権利主張があればその部分について遺言の効力は失効します。
※相続欠格者・廃除された者・兄弟姉妹にはありません
仮に遺言書で財産の全てを相続人の一人(例えば配偶者)に相続させようとしても、遺留分の権利を持っている相続人は遺留分減殺請求を行うことにより、権利を行使した相続人は財産の一部を手に入れることができます。
折角遺言書を認めても、遺留分減殺請求権を行使されるような遺言を遺してしまっては、結局争いの種になってしまいます。
これでは遺言書を作成意味がなくなってしまうため、ご相談の際は、しっかり説明致します。
遺言作成支援の費用
司法書士報酬
当事務所の報酬明細については「報酬規定」でご確認ください。※遺言書保管はご希望の場合のみ必要となります
なお、お見積りは無料です。
その他に以下のような実費がかかります。
実費
種別 | 金額 | 備考 |
---|---|---|
戸籍謄本 | 450円 | 1通あたり |
住民票 | 300円 | 役所によって多少違いが生じることあり |
固定資産税評価証明書 | 300円 | 1通あたり |
郵送費 | -- | 戸籍を代わりに取寄せる・権利証等を郵送する際の実費 |
不動産登記簿謄本 | 480円 | 不動産1個あたり |
公証人手数料
証書作成 | 100万円まで | 5,000円 |
---|---|---|
200万円まで | 7,000円 | |
500万円まで | 11,000円 | |
1,000万円まで | 17,000円 | |
3,000万円まで | 23,000円 | |
5,000万円まで | 29,000円 | |
1億円まで | 43,000円 | |
遺言手数料 | 1億円以下 | 11,000円 |
出張費用(役場外執務) | 日当 | 2万円(4時間以内は1万円) |
旅費 | 実費 | |
病床執務手数料 | 証書作成料金の2分の1 |