宅建士受験用の民法解説書(94条虚偽表示)

2018年4月25日資格試験

寒暖の差が激しいせいか、体調を崩しがちな坂口ですこんにちは。

隙間時間とやさしい宅建士民法解説

以前宅建士受験用の民法代理について少し記事を投稿しましたが、それを勢いで民法総則としてまとめあげたものを電子書籍化しました。

やさしい民法解説とありますが、どちらかというと緩い民法解説が適している気もします。
Amazonキンドルで出しているもののサンプルページがしっかり見られないようなので、こちらに意思の不存在の章の民法94条(虚偽表示)をそのまま載せます。

かなりの量で、ブログのスタイルと電子書籍のスタイルが少々異なりますがご了承ください。

意思の不存在

94条(虚偽表示)

(虚偽表示)
第94条 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
2 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

94条1項

相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。

Q「これって、相手と通じてってあるし」
P「お互い分かっててした嘘の意思表示は無効ってことやな」
Q「当たり前だった」
P「当たり前のことでもちゃんと規定しておかないと、揉めたときに困るからな」
Q「たしかに」
P「これを『通謀(つうぼう)虚偽』って言うこともある」
Q「通謀」
P「謀(はかりごと)」
Q「なんかかっこいい」
P「たとえばお互いに『売ったことにしようぜ』ってことにするときが通謀虚偽。茶番」
Q「茶番」
P「で、大事なのは2項だ。この2項のこともあって93条よりも先に94条を取り上げた」
Q「ほう」

94条2項

前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

Q「善意。よかれと思って?」
P「ではなくて。これは法律用語なんだが『善意』というのは『知らないこと』だ。反対に『知っていること』を『悪意』という」
Q「悪意」
P「悪意」
Q「誤解しそう」
P「わかる」

P「『善意の第三者』っていうのは『事情を知らない第三者』って読みかえればおk」
Q「なる」
P「前項、つまり第1項で決めていた虚偽の意思表示が無効っていうのは、事情を知らない第三者に対抗できないってことやな」
Q「対抗」
P「対抗。これは、具体例を挙げた方が分かりやすいな。AとBがお互いに嘘でAからBが限定品を買ったことにした」
Q「限定品」
P「好きやろ?」
Q「うむ」
P「そしてAB間の通謀虚偽を知らずにQはBからその限定品を買ったとする」

A=(通謀虚偽)=B→Q(善意)

Q「俺が出てきた」
P「臨場感あるやろ?」
Q「お、おう」
P「せっかく買ったのに、AとかBが『いやいや、さっきのは通謀虚偽で無効だからQは買ったことにならない』って言ったとする。そのときの気持ちを述べよ」
Q「は? ってなる」
P「せやろ」
Q「おまえら何言うてんねんってなるわ」
P「うむ。だから善意の第三者であるQはAやBがいくら『さっきのは無効』って主張したとしても『無効とは言わせない』って主張できることや」
Q「当然の権利」
P「それをこの2項で定めてるってことやな」
Q「なるほど」
P「もっと言うと『対抗できない』ってのは『裁判で主張しても負ける』ってことで、不動産の売買なら先に登記を備えた方が勝つってことやな」
Q「登記を備えるってのは」
P「所有権移転登記をするってことやけど、わかりやすく言うなら『名義を付ける』ってことや」
Q「なるほど」
P「詳しくはもっと先の条文で出てくる」
Q「うぃ」

※総則編ではなく物権編となるため、この書籍には収録されていません

第三者

P「そもそも第三者って誰ってことも知っておかんとな」
Q「第三者つったら第三者ちゃうん?」
P「そもそも、さっきの例でいえば俺は第三者じゃない」
Q「そらそうやろ。登場してへんし」
P「そうそう。今回の利害にまったく絡んでないし。意思表示の目的や効果に法律上の利害関係があるってのが原則ってことや」
Q「ややこしいけど、利害関係があるかどうかってのがポイントか」
P「もうひとつ、『独立して新しく登場した人』かどうかやな」
Q「む?」
P「たとえばAが死んでしまってその相続人は第三者かって言われるとどう思う?」
Q「相続人やろ? 違うんちゃうかな」
P「うむ、違う。相続人はAの権利義務をまるっと受け継ぐわけで、新しい登場人物とは言えんからな」

Q「第三者については条文で決まってないけど」
P「有名な判例をおさえておけばいい」
Q「知らないのが出てきたら?」
P「『独立して新しく登場した人かどうか』で判断したらええけど、わからんならその選択肢で悩み続けるのは時間の無駄」
Q「ばっさり」
P「ほなら判例を紹介するで。ABで虚偽表示しててQが善意ってのが前提な」

A=(通謀虚偽)=B-Q(善意)

Q「あい」
P「あと、抵当権やらまだ説明してないのが出てくるのは、まぁしゃーない」
Q「お、おう。しゃーない」

P「①AがBに虚偽で土地を売った。その土地に抵当権を設定したQは?」
Q「『その土地』だし『俺も新しい登場人物』。無効って言われると困る『利害関係人』だから」
P「第三者に該当する」
Q「おう」

P「②QはBがその土地を買ったから安心してお金を貸したときは?」
Q「『その土地に対して』じゃないってこと? ほなら」
P「第三者にはならない」
Q「だよな」

P「③AがBに茶番で金を貸したけどAがQに取立てをお願いしたときは?」
Q「『取立てのため』なんやろ?」
P「そうそう」
Q「ほならAとBの貸し借りの枠に入るからなぁ」
P「『独立して』ではないから第三者にはならない」
Q「だよなー」

P「④AがBに茶番で金を貸したときに、Aからその貸した金を返せっていう権利を譲ってもらったQは?」
Q「返せって言いたい」
P「さっきと違って、『お金を返せ』っていう権利がQっていう別の人間に移ってるわけやな。しかも譲ったからAはその関係からドロップアウトしてる」
Q「『独立して新しく登場した利害関係人』ってことで第三者に該当するってことか」
P「YES」
Q「たk」
P「おっとそこまでだ」

P「⑤Bがその土地の上に建物を建ててQに貸したときは?」
Q「うーん、第三者になりたいけど」
P「土地と建物は別々の不動産なんよ。だから残念ながらQは『建物の借主』であって土地は関係ないから第三者にならない」
Q「しょんぼり」
P「ちょっと感覚とずれるかもしれないけど、しゃーない」

P「んでこの『無効』ってのは『そもそも最初から効力なし』ってことなんや」
Q「無効やしなぁ」
P「ただ、たとえば土地なんかは『これ俺のモン』って誰に対しても言い張るためには『登記』が必要なんやけど」
Q「名義を付けるってことか」
P「そうそう。でもABで虚偽の土地売買をしててBからその土地を譲り受けた善意のQに対してAとかBはQに対抗できないわけや」
Q「QはAとBに対抗できるってことやろ?」
P「そうそう。だから登記は必要なんや」
Q「ほー。でもまぁ言えなくてもしゃーないわな」

転得者

P「さっきの虚偽の土地売買でQからさらに土地を譲り受けたRがいたとする」
Q「どんどん登場人物が増える」
P「文句言わない。試験とはそんなもん」
Q「」
P「QがABの虚偽のことを知っていたとして、Rは善意だったらAはRに無効って言えると思う?」

A=(通謀虚偽)=B-Q(悪意)-R(善意)

Q「そらRは知らないんだから言えないと可哀想」
P「うむ、Aは無効主張できない。ならQが善意だったとして、RがABの茶番のことを知っていたら?」

A=(通謀虚偽)=B-Q(善意)-R(悪意)

Q「Rは知ってるんやろ?」
P「Rは悪意だけど、AはRに無効主張できないんだな」
Q「え、なんで」
P「もし言えたとしたら、何も知らないQはRから責任追及されちゃうやん。『土地を買ったのに無効とか言われて権利ないとか、どういうことやねん』って」
Q「あー確かに」
P「そうなっちゃうと善意のQが可哀想だからAはRに無効主張できないっていうのが判例」
Q「まぁ、理屈ではそうなるか」
P「このRのことを転得者って言う。単語だから憶えよう」
Q「」

まとめ

(虚偽表示)
第94条 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
2 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

善意の第三者は『独立して新しく利害関係をもった人』

善意の第三者がいれば、その人を含めてそこから先の転得者は保護される
A=(通謀虚偽)=B-Q(悪意)-R(善意)
A=(通謀虚偽)=B-Q(善意)-R(悪意)
どちらの場合も、AはRに対抗できない

過去問確認

(H27-02)
Aは、その所有する甲土地を譲渡する意思がないのに、Bと通謀して、Aを売主、Bを買主とする甲土地の仮装の売買契約を締結した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。なお、この問において「善意」又は「悪意」とは、虚偽表示の事実についての善意又は悪意とする。

1.善意のCがBから甲土地を買い受けた場合、Cがいまだ登記を備えていなくても、AはAB間の売買契約の無効をCに主張することができない。

2.善意のCが、Bとの間で、Bが甲土地上に建てた乙建物の賃貸借契約(貸主B、借主C)を締結した場合、AはAB間の売買契約の無効をCに主張することができない。

3.Bの債権者である善意のCが、甲土地を差押えた場合、AはAB間の売買契約の無効をCに主張することができない。

4.甲土地がBから悪意のCへ、Cから善意のDへと譲渡された場合、AはAB間の売買契約の無効をDに主張することができない。

正解→2

(H24-01)
民法第94条第2項は、相手方と通じてした虚偽の意思表示の無効は「善意の第三者に対抗することができない。」と定めている。次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、同項の「第三者」に該当しないものはどれか。

1.Aが所有する甲土地につき、AとBが通謀の上で売買契約を仮装し、AからBに所有権移転登記がなされた場合に、B名義の甲土地を差し押さえたBの債権者Cは、通謀虚偽表示における「第三者」に該当する。

2.Aが所有する甲土地につき、AとBの間には債権債務関係がないにもかかわらず、両者が通謀の上でBのために抵当権を設定し、その旨の登記がなされた場合に、Bに対する貸付債権を担保するためにBから転抵当権の設定を受けた債権者Cは、通謀虚偽表示における「第三者」に該当する。

3.Aが所有する甲土地につき、AとBが通謀の上で売買契約を仮装し、AからBに所有権移転登記がなされた場合に、Bが甲土地の所有権を有しているものと信じてBに対して金銭を貸し付けたCは、通謀虚偽表示における「第三者」に該当する。

4.AとBが通謀の上で、Aを貸主、Bを借主とする金銭消費貸借契約を仮装した場合に、当該仮装債権をAから譲り受けたCは、通謀虚偽表示における「第三者」に該当する。

正解→3

さいごに

以下がその電子書籍となります。
試験のお役に立てれば幸いです。