宅建士の試験と新民法(民法改正)

2019年11月25日資格試験

こたつを出すにはまだ早いと思っている坂口です、おはようございます。
あれはガスファンヒーターと並んで、冬の最終兵器だと思っています。

改正民法と試験勉強

来年4月1日から新民法が施行されます。
宅建士に限らず、司法書士試験や行政書士試験に影響が出ることが予想されますが、これまで出版している宅建士用の民法解説が一部そぐわないことになってしまいます。
そこで、電子書籍である強みを活かして、既存のものをアップデートしました。

せっかくなので、そのアップデート部分を一部ここで紹介させていただきます。

民法賃貸借と借地借家法

【改正民法対応済】わかりやすい宅建士の民法(民法賃貸借&借地借家法)より、譲渡の効果にかかる新設された条文は次のとおりとなっています。
こちらの解説(会話)部分をそのままひっぱってきました。

譲渡の効果(不動産賃貸借)

(不動産の賃貸人たる地位の移転)
民法 605条の2 前条、借地借家法(平成3年法律第90号)第10条又は第31条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する。
2 前項の規定にかかわらず、不動産の譲渡人及び譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及びその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は、譲受人に移転しない。この場合において、譲渡人と譲受人又はその承継人との間の賃貸借が終了したときは、譲渡人に留保されていた賃貸人たる地位は、譲受人又はその承継人に移転する。
3 第1項又は前項後段の規定による賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権に移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない。
4 第1項又は第2項後段の規定により賃貸人たる地位が譲受人又はその承継人に移転したときは、第608条の規定による費用の償還に係る債務及び第622条の2第1項の規定による同項に規定する敷金の返還に係る債務は、譲受人又はその承継人が承継する。

Q「長い」
P「今回の民法改正で追加された条文で、今まで判例などで言われてきたことを明文化したんや」
Q「とりあえず分割して解説をば」
P「うい」

民法 605条の2 前条、借地借家法(平成3年法律第90号)第10条又は第31条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する。

民法 第605条 不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その不動産について物権を取得した者その他の第三者に対抗することができる。

P「これはそのまま、対抗要件を備えてる賃借権だった場合になるけど、不動産が譲渡されたときは所有者変わるし、賃貸人っていう立場は新所有者やでってことやな」
Q「割と当たり前な気もする」
P「うむ」
Q「むしろ対抗要件備えてなかったらどうなんねん」

(合意による不動産の賃貸人たる地位の移転)
民法 605条の3 不動産の譲渡人が賃貸人であるときは、その賃貸人たる地位は、賃借人の承諾を要しないで、譲渡人と譲受人との合意により、譲受人に移転させることができる。この場合において、前条第3項及び第4項の規定を準用する。

P「借り手に対抗要件がなかったとしても、譲渡人と譲受人との話し合いで賃貸人としての地位を新所有者に移すことはできるで」
Q「しかも『賃借人の承諾を要しないで』ってある」
P「ま、所有者は強いってことやな」
Q「そらそうだ。借り手の意思は関係ないんやな」
P「しゃーないな。例外はあるけど借り手が嫌だって理由で、新所有者がオーナーって言えないのはさすがに」
Q「それもそうか。例外って?」
P「第2項にあるで」
Q「お、おう」

民法 605条の2 第2項 前項の規定にかかわらず、不動産の譲渡人及び譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及びその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は、譲受人に移転しない。この場合において、譲渡人と譲受人又はその承継人との間の賃貸借が終了したときは、譲渡人に留保されていた賃貸人たる地位は、譲受人又はその承継人に移転する。

Q「ややこしい」
P「これは信託という制度だったり、そもそものオーナーのノウハウに期待したいときがあるからっていう社会的なニーズに応えたものやな」
Q「まだややこしい」

(第1項)
B(賃借人)

A(賃貸人・現所有者)→C(新所有者・新賃貸人)

P「普通は新所有者が新しい大家になるわけや」
Q「これはわかる」
P「けど、2項ではCがAに大家としてのノウハウに期待してるから、こうしたいってことになる」

(第2項)
B(転借人)
| AB間の賃貸借契約は維持したまま(借主BにとってAが貸主)
A(賃借人・転貸人)

C(賃貸人)

Q「おお、なるほど」
P「こういった状態にするってことやな」
Q「賃貸借が終了したとき~ってのは」
P「それは、転貸借の終了んとこで説明する」
Q「あい」

民法 605条の2 第3項 第1項又は前項後段の規定による賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権に移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない。

Q「前項後段の規定」
P「前項は知ってのとおりこの場合だと第2項。後段ってのは『この場合において~譲受人又はその承継人に移転する』の部分。条文が2つの文で構成されてるからな」
Q「なるほど」
P「そして新オーナーであると主張したいのであれば、所有権移転登記をして名義人になれということや」
Q「所有権移転登記がないと借り手に対抗できないってことか」
P「対抗要件ないとあかんでってことやな」
Q「何故に」
P「もし所有権移転登記してなかったら、別の人が所有権移転登記を備えてしまって『私が新オーナーである』ってなったとき、借り手は混乱するやろ?」
Q「ああ……」
P「だから新オーナーを主張するのであれば、ちゃんと対抗要件備えておけよってことや」
Q「なるほど」

民法 605条の2 第4項 第1項又は第2項後段の規定により賃貸人たる地位が譲受人又はその承継人に移転したときは、第608条の規定による費用の償還に係る債務及び第622条の2第1項の規定による同項に規定する敷金の返還に係る債務は、譲受人又はその承継人が承継する。

P「これは敷金のとこでまとめて」
Q「そか」

おわりに

民法総則(時効含む)や177条(条文改正はないけれども解説が民法改正の影響を受けている)も新民法に対応させています。
また、抵当権に焦点を絞ったものも執筆していく予定です。

今回記事にしている部分については、次の電子書籍に収録されています。