民法99条~代理の基本

2019年11月25日資格試験

2019.11.25追記)
2020年4月1日より民法が改正されます。
以下の記事は改正に影響されないものであることを、あらかじめご了承ください。
また、電子書籍につきましては民法改正に対応させたものを販売しています。
なお、すでにご購入しただいている方につきましても、ファイルを上書きしてありますので、改正民法における解説に自動的に差し変わります。

宅建士の試験において民法の代理は頻出論点です。
代理の条文や要件・効果を正確に把握することが合否に影響を及ぼすということになるわけですが、ただただ丸暗記をするのは負担が増えてしまいます。
では、どうしたらスムーズに憶えられるのでしょうか。

民法第九九条(代理行為の要件及び効果)

実際の条文と要件・効果は次のようになります。

民法(代理行為の要件及び効果)
第99条 代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。
2 前項の規定は、第三者が代理人に対してした意思表示について準用する。

要件
①本人が代理人に対して代理権を授与し(代理権の授与)
②代理人が本人のためにすることを示して(顕名)
③代理人が相手方との間で法律行為をする

効果  代理人のした意思表示、又は代理人が受けた意思表示の効果は本人に帰属する。

資格試験のための民法で大切なことはこちらで解説しているので、以下でイメージするためにちょっとした対話を作りました。
あくまでイメージ用なので、最終的には条文や要件・効果をしっかり憶えてください。

民法代理(99条)の対話

Q「代理の要件が3つあるというけど、これを暗記するのは辛い」
P「当たり前のことしか書いてない」
Q「マジで?」

代理権の授与

P「要件①だけど、そもそも代理権のない人間が何かをしたとしたら、そもそも『代理』っぽくは感じないやろ」
Q「たしかに」
P「厳密には表見代理や無権代理などについての規定はあるけれども、それは後で出てくるから置いておいて」
Q「あい」
P「代理なんだから代理権があるっていうのが前提になるわけだ」
Q「せやな」
P「『その権限内において』ってのも当たり前の話で、権限外でもOKってなるとマズかろう」
Q「やりたい放題になってまうしな」
P「この『権限内』ってのはすごく大事で、代理人が『権限外』のことをしでかしたときはどうするかってのは後の条文で出てくる」
Q「ほえー」

顕名

P「次に要件②」
Q「顕名って小難しい言葉のせいで覚えたくない病が発症する」
P「しらんがな」
Q「なんでこれも要件なん?」
P「これも当たり前のことを言ってるだけやで」
Q「というと」
P「たとえばQは商品を受け取りに行きたいけど行けないから、友達のRくんに代理で受け取ってもらうとする」
Q「友達」
P「友達」
P・Q「」

P「進まない」
Q「うむ」
P「Rくんがお店で『これ受け取りに来ました』と言いました。店員の気持ちになって答えよ」
Q「『誰やお前』」
P「ってなるやろ?」
Q「そらそうだ。だって俺の代理かどうかわからんもん」
P「つまりそういうこと。だから『Qくんの代理で来たRです』って言わないと」
Q「たしかに」
P「この『Qくんの代理で来たRです』って言うのが顕名。条文では『本人のためにすることを示して』ってある」
Q「なるほど、当たり前のことだった」

法律行為

Q「んじゃ③は?」
P「あのさぁ、そもそも法律行為をしなかったとしたら代理の存在価値が問われないか?」
Q「んー、たとえばRに①代理権を与えて、お店の人に②顕名して」
P「それで?」
Q「『俺はQの代理人だって言っただけ」
P・Q「何がしたいんだ」

P「ほら、だからこの3つの要件は当たり前のことしか言ってない」
Q「そう考えれば憶えやすい気がする」
P「せやろ?」
Q「効果は」
P「いやいや、これなかったら代理にならない。だって、せっかくRくんはQのために商品を受け取ったのにQに反映されないことになるとか、#代理とは ってハッシュタグが出来るレベル」
Q「そんなハッシュタグはいらない」

効果帰属

P「『本人に対して直接にその効力を生ずる』ってあるけど、これも当たり前のこと」
Q「代理だから、そら本人に効果が生じるってことだわな」
P「そういうこと。専門用語で『効果帰属』っていう」
Q「小難しい単語をしれっと」
P「説明の手間が省けるから便利なんや」
Q「そか」
P「もしも条文からこれが省かれていたら、代理で法律行為したら代理人がその効果を受けるってことになる」
Q「意味が分からない」
P「やろ?」
Q「なら2項は?」

民法99条2項

前項の規定は、第三者が代理人に対してした意思表示について準用する。

P「なかったら、お店の人がRくんに何かしらの意思表示をしても効果ないってことになる」
Q「つまり」
P「お店の人がRくんに『あいよー、これだから』って渡そうとしたとしても渡したことにならない」
Q「二重取りできそう」
P「そういうこと」
Q「あかんな」
P「この例だと売買契約だとか引渡義務といった内容にも絡んでくるから、ざっくりとした言い方になってはいるけど、イメージはできたと思う」
Q「あい」

まとめ

上のような対話でイメージできたことを踏まえて、次の条文と要件・効果を正確に把握しましょう。

民法(代理行為の要件及び効果)
第99条 代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。
2 前項の規定は、第三者が代理人に対してした意思表示について準用する。

要件
①本人が代理人に対して代理権を授与し(代理権の授与)
②代理人が本人のためにすることを示して(顕名)
③代理人が相手方との間で法律行為をする

効果  代理人のした意思表示、又は代理人が受けた意思表示の効果は本人に帰属する。

たとえばどのようなことが顕名になるのか、ならないのか、といった細かい論点については判例などを参考に憶えることになるのですが、そういった内容については他の参考書などに譲ります。

電子書籍を出版するときには、省略した論点や判例についても加筆する予定です。