夫婦の財産関係と婚前契約

生活

直射日光が痛い坂口です、こんにちは。
まるで夏のような日ざしですが、木陰はまだ涼しいので溶けずにすんでいます。

婚前契約書(結婚契約書)とは

最近は目にする機会が増えたもののひとつに婚前契約があります。
耳慣れない言葉かもしれませんが、端的に言えば結婚前にあらかじめ財産などについて決めておくというものです。

夫婦と財産関係

結婚前からの財産や相続などによって取得した財産については共有ではなく個人単独の財産ですが、結婚したときに財産については別に決め事をしていなかったときは夫婦の共有財産と推定されます。(民法762条)

夫婦財産契約(婚前契約)

婚姻届を提出する前に契約を結ぶことによって、結婚後の財産について契約で縛ることが可能となるのが夫婦財産契約です。(民法755条)

夫婦財産契約(婚前契約)の時期について

結婚前というのが要件となっています。
婚姻届を提出してしまった後に契約を結んでも自由に取り消すことができるため、本来期待していた契約の効力は期待できません。
仮に

結婚前に考えたくはないですが、仮に将来離婚することになってしまい財産分与の話合いが必要となったとき、契約を結んでいなければ共有財産だと推定されます。

夫婦財産契約(婚前契約)の効力(対抗用件)

契約の当事者である夫婦については契約を結んだという事実だけで効力があります。もちろん万が一に備えて婚前契約書などの書面にすることが多いです。
しかし、相手の相続人や第三者に対して契約の存在を主張するためには登記をする必要があります。登記をすることによってはじめて主張することができる(対抗できる)状態になります。(民法756条)

契約内容の変更

結婚した後になって契約の内容を変えたいと思っても、原則として変えられません。
ただし、夫婦の一方が財産を管理するという内容だったにもかかわらず、不適切な管理によって財産を著しく目減りさせるなど財産を危うくさせているときは、「家庭裁判所に」自分が管理できるように変更するという請求ができ、併せて管理されている財産を分割するように請求もできます。(民法758条)

このように基本的に契約内容を事後的に変更できないので、契約を結ぶときは慎重に内容を吟味する必要があります。

財産以外の婚前契約

法律で契約が認められているのは財産です。
たとえば子育てや家事の分担を決めていたとしても、自由に変更することができます。
では、財産以外の内容を書面にすることが無意味かと問われると、そうではないと考えています。特に家事の分担などについては夫婦財産契約を結ぶ結ばないに関係なく、一般的に話し合っていることが多いです。その結果についてしっかり書面に残しておけば明確になりますし、事後的に話し合いで変更するにしても、もともとどういう約束だったかが水掛け論ではなくなります。

しかし、夫婦関係が破綻しているときには夫婦間の契約を取り消すすることができないという判例もあるため、絶対的に自由に変えられたり取り消せるというわけではないことに注意が必要です。(昭和33年3月6日 最高裁第一小法廷 昭30(オ)800号他)

夫婦財産契約の登記

夫婦の相続人や第三者などに婚前契約(夫婦財産契約)をしていることを主張するためには登記が必要だということを記載しました。
具体的にどのような書類が必要なのかなどについては、

  • 外国法人の登記及び夫婦財産契約の登記に関する法律
  • 夫婦財産契約登記省令
  • 夫婦財産契約登記規則

で定められています。

これらを紐解くのは専門家である司法書士の仕事なので細かい解説は省略して、単純な必要書類のみ列挙します。

必要書類

  • 夫婦財産契約書
  • 夫婦それぞれの住民票
  • 夫婦それぞれの印鑑証明書
  • 夫婦それぞれの戸籍(婚姻していないことを証明するため)

管轄となる法務局ですが、夫婦が結婚して夫の氏(苗字)とするときには夫となる人の、妻の氏とするときは妻となる人の住所地と管轄する法務局となります。

おわりに

夫婦財産契約(婚前契約)は日本ではまだまだ普及していないようですが、今後は増えていくかもしれません。
興味があるときは司法書士のご相談ください。