コレクションを捨てられずに遺すための選択肢

コレクションの価値観

愛好家にとっては非常に価値あるものでも、家族にとっては邪魔な存在ということが少なからずあります。

生前に勝手に処分されなかったとしても、コレクターが亡くなったらこれ幸いとゴミのように扱われてしまうケースをしばしば耳にします。
(生きているうちに勝手に処分されたときはまた別の問題となるため、ここでは割愛させていただきます)
もう自分はこの世に存在していないとはいえ、とても寂しい気持ちになってしまうのは否めません。

では、対策を講じるとしてどのような選択肢があるのでしょうか。

価値のわかる人へ遺したい

ご自身の死後、コレクションが不本意な処分をされないために考えられる方法はいくつかあり、基本的には次のとおりです。

・公正証書遺言
・自筆証書遺言
・死因贈与
・死後事務委任
・信託

しかし、それぞれの事情など全体を見渡した上で、どの方法を選択するかを決めなければ意味が薄れてしまいます。

公正証書遺言

たとえば売却先を指定してその売却金を相続人に相続させるというように、遺産についての指定等を行うという意味で、遺言は一番馴染む方法です。

公正証書遺言の場合、金融機関の払戻手続き(または名義書換え手続き)もスムーズに行うことが可能です。

その反面、次のような手間などがかかります。
・平日の日中に公証人役場へ赴く必要がある
・公証人手数料がかかる
・財産の一部のみの遺言は原則受け付けてもらえない

したがって、平日に公証人役場へ赴くことが可能であり、財産全体についてどのように相続人に相続させるかはっきりしているときは、公正証書遺言が適しています。

自筆証書遺言

財産の一部であるコレクションについてのみの遺言が可能です。
公正証書遺言に比べて、公証人役場へ出向く必要はありません。

その反面、次のようなデメリットがあります。
・相続発生後に遺言書を家庭裁判所で検認してもらう必要がある
・金融機関の払戻手続きなどは自筆証書遺言だと応じてもらえないことが大半である
・すべて自筆で記す必要がある

したがって、財産の一部であるコレクションのみを処分し相続人に相続させるときに自筆証書遺言は適しています。
不動産の名義変更も可能ですが、金融機関の手続きについては自筆証書遺言ではほぼ期待できないことと遺言書の検認手続きという手間があることに留意する必要があります。

第三者へ贈る(遺贈)という内容も可能なため、明確に寄贈先が決まっているときは公正証書遺言・自筆証書遺言どちらでも対応することができます。
コレクションを価値の分かるところへ売却し、その代金をご家族に遺すという清算型遺贈という方法もあります。

死因贈与契約

死因贈与契約とは自分が死んだらという条件で財産を譲るという贈与契約の一種です。
あくまで契約という点で遺言と違います。

ご家族がコレクションの価値を把握している場合は、第三者へ死因贈与するというときにトラブルの原因になってしまうかもしれないので、ご家族の了解を得ておく方が無難です。
また、贈与であって売却ではない点に注意を要します。

したがって、ご家族了解のうえでコレクション仲間に無償で譲るといったときに適しています。
※寄贈する場合でこの方法を選択するときは寄贈先と契約を結ぶ必要があるため、死因贈与契約は馴染みにくいです

死後事務委任契約

死後事務委任契約とは自分が死んでしまったときに行う各種手続きなどをあらかじめお願いするという契約です。

コレクションの中には見られなくないものもあり、それも含めて対策を講じたいときに適しています。
また遺言といった形式に抵抗があるときで贈与ではなく売却を希望されているときにも、この死後事務委任契約を結んでおくと希望通りの売却先など細かく指定できるメリットがあります。

民事信託

コレクションを他の財産から分離して信託財産とし、ご自身が亡くなられた後も展示など処分ではなく管理することが可能です。
管理する人に対して報酬を支払うなど、柔軟な対応が可能となります。

ただし、費用が他の方法に比べてかなり高額になってしまうため、コレクション以外の財産 によっては相続人など亡くなられた後にトラブルとなることも否定できません。
かなり慎重を期す必要があります。
※これはコレクションの信託に限らず、およそ家族信託とよばれるもの全体(障害を持ったお子さんのための信託・ペットのために財産を遺すための信託など)にいえることです。

コレクションとご自身の事情

どのようなときにどの手続きが適しているのか軽く触れましたが、実際はそれぞれの事情をしっかり把握したうえで選択する必要があります。 具体的な手続き方法だけではなく、結局自分はどれを選べばいいのかわからないという場合でも、お気軽にメール等でご相談ください。