奨学金の返済と分別の利益

生活

保証については受験時代、理解するのに苦労した記憶があります。
少し前にニュースで話題になっていたため、簡単ですが分別の利益とはどういうものなのかを解説いたします。

保証人と分別の利益

分別の利益というのは耳慣れない言葉かと思います。
これは、保証人が複数いるときはその頭数で割った分だけ保証するということを意味します。

第四百五十六条 数人の保証人がある場合には、それらの保証人が各別の行為により債務を負担したときであっても、第四百二十七条の規定を適用する。
(分割債権及び分割債務)
第四百二十七条 数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。

たとえば100万円お金を借りる人の保証人が2人いるときは、各保証人は50万円分について負担するということです。

連帯保証人という例外

連帯保証人はこの分別の利益がありません。
つまり、さきほどの例だと連帯保証人は100万円全額について負担していることになります。

連帯保証人と保証人がいるとき

では、100万円について連帯保証人1人(Aさん)と保証人1人(Bさん)がいるときはどうなるのでしょうか。
連帯保証人も保証人です。
つまり、Bさんとしては分別の利益のおかげで50万円分について負担していることになり、Aさんは100万円全額となります。

求償権(保証人が返済したとき)

そもそも保証人がかわりに返済したときは、その額について借りた人(債務者)に対して「かわりに払ったから、その分をこちらに払ってくれ」と言えます。
これを専門用語で求償権といいます。
もしも、さきほどのBさんが100万円全額を返済したときはどうなるのでしょうか。
50万円分の負担をしているということで、50万円は当然に債務者に対して払ってくれという権利はあります。
負担分を超える50万円については、債務者からお願いされてない保証人が支払ったときに似ているということで、この50万円部分についても求償権はあります。
また、50万円分については連帯保証人に対しても払ってくれと言えます。

(共同保証人間の求償権)
第四百六十五条
2項 第四百六十二条の規定は、前項に規定する場合を除き、互いに連帯しない保証人の一人が全額又は自己の負担部分を超える額を弁済したときについて準用する。

(委託を受けない保証人の求償権)
第四百六十二条 主たる債務者の委託を受けないで保証をした者が弁済をし、その他自己の財産をもって主たる債務者にその債務を免れさせたときは、主たる債務者は、その当時利益を受けた限度において償還をしなければならない。
2 主たる債務者の意思に反して保証をした者は、主たる債務者が現に利益を受けている限度においてのみ求償権を有する。この場合において、主たる債務者が求償の日以前に相殺の原因を有していたことを主張するときは、保証人は、債権者に対し、その相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。

連帯保証人の求償権

連帯保証人については分別の利益はないのですが、100万円全額をかわりに返済したのであれば、全額を債務者に対して返してと言えます。

債権者との関係

分別の利益がある保証人が100万円返済してしまったけれども、50万円分しか負担してないのだから相手に返してと言えるのでしょうか。

結論からいえば裁判所の判断を待つ形になります。

個人的には保証の負担額である50万円を超える部分については「非債弁済」といって、債務が存在しないにもかかわらず任意に弁済してしまったと言えそうです。
また、この非債弁済について相手に返還請求するためには、債務が存在していないことを知らなかったときに限られます。

たとえば相手が分別の利益について何も言わずに100万円全額をBさんに返済してくれと請求し、Bさんがそれに応じてお金を払ったとします。
Bさんが分別の利益というものを知らなかったときには、保証の負担部分を超える50万円分は債務ではない(債務の不存在)ということを知らずに払っていると評価できそうです。

このように考えると、相手に対して返還請求できそうに思えますが……

おわりに

分別の利益という言葉は、日常生活でまず出てこないと思います。
保証人になっていて返済を求められてしまったら、弁護士や司法書士に相談してみることをおすすめします。