預けた手荷物が盗まれた責任

2018年9月21日生活

先週末、学生時代の後輩の結婚式に出席しました。
懐かしい学友に会えて嬉しかったですし、みなさんあまり変わっていませんでした。

預かった(預けた)手荷物が盗難に遭ったときとその責任

手荷物などを無償で預け、あとで返してもらうということは、そこまで珍しくありません。

寄託とは

(寄託)
民法 第六百五十七条 寄託は、当事者の一方が相手方のために保管をすることを約してある物を受け取ることによって、その効力を生ずる。

(寄託者による返還請求)
同 第六百六十二条 当事者が寄託物の返還の時期を定めたときであっても、寄託者は、いつでもその返還を請求することができる。

預けるという口約束だけではなく、実際に預けてはじめて寄託契約が成立ということになります。
一般的には、預けて返してもらうまでがセットですね。

そして、返してもらうタイミングを決めていたとしても、預けた人は、いつでも「返してください」と言えます。
タイミングを決めたから返さないっていうのは、首を傾げてしまう感覚ですよね。法律上も、いつでも返してもらえると定められています。

無償? 有償?

実は寄託という法律行為は無償に限っているわけではありません。
とはいえ、無償で預かるときには、その責任は少し軽くなります。

注意義務

(無償受寄者の注意義務)
同 第六百五十九条 無報酬で寄託を受けた者は、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、寄託物を保管する義務を負う。

無償で預かっているときは、善管注意義務(善良な管理者の注意義務)ではなく、自分の財産と同じ程度の注意を払っていればいいよと定められています。

手荷物などが盗まれてしまった

自分の所有物と同じくらいの注意を払って保管していれば、損害賠償の責任を負うことはありません。
この「自己の財産に対するのと同一の注意」というのは、抽象的でわかりにくいです。具体的には誰でも立ち入れるところだったり、管理者の死角となるようなところに保管しているときは、この注意義務を果たしているとはいいにくいです。
一般的に、決められた建物内だったり、他人が立ち入れないような場所で保管します。
自分だったらそんな管理の仕方はしないというくらいにずさんなことをしていると、この注意義務違反ということになります。

高価なものが入っていた

個人で預けるというケースではなく、お客さんとして人が来ることを前提としている建物でも、手荷物預かりという形で預けることがあると思います。

では、こういった手荷物預かりをしたときに盗まれてしまい、入れていた高価な物も一緒に盗られてしまったときの責任はどうなるのでしょうか。

まず、原則として寄託なので注意義務違反があったのかどうかが問題となります。
そして注意義務違反があったとしても、多くの人が行き交うことを前提としている建物のときには免責されることがあります。

商法 第五百九十四条 旅店、飲食店、浴場其他客ノ来集ヲ目的トスル場屋ノ主人ハ客ヨリ寄託ヲ受ケタル物品ノ滅失又ハ毀損ニ付キ其不可抗力ニ因リタルコトヲ証明スルニ非サレハ損害賠償ノ責ヲ免ルルコトヲ得ス
○2 客カ特ニ寄託セサル物品ト雖モ場屋中ニ携帯シタル物品カ場屋ノ主人又ハ其使用人ノ不注意ニ因リテ滅失又ハ毀損シタルトキハ場屋ノ主人ハ損害賠償ノ責ニ任ス
○3 客ノ携帯品ニ付キ責任ヲ負ハサル旨ヲ告示シタルトキト雖モ場屋ノ主人ハ前二項ノ責任ヲ免ルルコトヲ得ス

同 第五百九十五条 貨幣、有価証券其他ノ高価品ニ付テハ客カ其種類及ヒ価額ヲ明告シテ之ヲ前条ノ場屋ノ主人ニ寄託シタルニ非サレハ其場屋ノ主人ハ其物品ノ滅失又ハ毀損ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スル責ニ任セス

読みにくいかもしれませんが、旅館や飲食店を含む、お客さんが来ることを目的とする建物の責任者は、預けられたものが盗難されたり傷ついてしまったとしても、不可抗力だったことを証明すれば損害賠償の責任はありません。
また、高価品などについては、「貴重品である」と事前に伝えていなかったら、その高価品については損害賠償の責任を負いません。高級時計が入っているバッグを預けるときに、何も伝えていなかったときは、その高級時計に対して責任を問えないということです。

多くの人が集まってくる場所ですから、高価なものについてはしっかりと伝えておきなさいよという意味です。普通は高価なものと言われると、より厳重に管理しようと思いますからね。

おわりに

無償で預けていたものが盗難にあってしまったときは、預けられた側がどの程度の注意を払っていたかによって結論が異なります。
また、飲食店など人が集まることを目的としている建物の中だったときは、高価な品ですよと明言していない限り、その貴重品にたいして責任を問えません。